コンクリートと鋼材を組み合わせたコンクリート構造物の性能を長期間にわたって保持するためには,コンクリートと鋼材が劣化することのないように耐久性を保持する必要があります。一般にコンクリート内部に配置された鋼材は,セメント成分の高いアルカリ性によって腐食が停止するため,長期の耐久性が確保できると考えられています。ただし,コンクリート中に塩化物が侵入する「塩害」や大気中の二酸化炭素との反応でコンクリート中のアルカリ性が失われる「中性化」が進むと鋼材が急速に腐食し,構造性能を確保できなくなる場合があります。
そこで,コンクリート中の鋼材の腐食環境を電気の作用で改善させる方法が「電気化学的防食工法」です。電気化学的防食工法は,適用の目的や効果によって「電気防食工法」「脱塩工法」「再アルカリ化工法」「電着工法」に区別されます(表-1)。
ここでは,「 電気防食工法」「 脱塩工法」「再アルカリ化工法」を紹介します。
工法 | 電気防食工法 | 脱塩工法 | 再アルカリ化工法 | 電着工法 |
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適用対象の 劣化機構 |
塩害・中性化 | 塩害 | 中性化 | 塩害・中性化 |
適用の目的 | 鋼材の腐食反応の 抑制・停止 |
鋼材の腐食環境の改善 | 鋼材の腐食環境の改善 | 腐食因子の侵入抑制による 鋼材の腐食環境の改善 |
適用の効果 | 鋼材の腐食速度の 低減・停止 |
コンクリート中の 塩化物イオン濃度の低減 |
コンクリート中の アルカリ性の回復 |
電着物(電解質溶液中のCaやMg等) によるひび割れの閉塞や コンクリート表面の被覆・緻密化 |
通電期間 | 防食期間中継続 | 8週間程度 | 1~2週間 | 約6ヶ月 |
通電量(電流密度) | 0.001~0.03A/m2 | 1A/m2 | 1A/m2 | 0.5~1A/m2 |
電解質溶液 | 不要 | 必要 H3BO3, K2CO3溶液等 |
必要 アルカリ溶液 |
必要 海水等 |